AGXWire

../_images/wire.png

AGXWireはAGX Dynamicsを使ったワイヤーモデルです。 実装にはAGX DynamicsのモジュールagxWireを利用しています。

AGXWireの特徴

  • 千切れにくい

    ワイヤーが強い力で引っ張っられても千切れにくいです。例えば、クレーンでコンテナを吊り下げるような用途として有用です。

  • 長くしてもシミュレーション速度が落ちにくい

    一般的な物理エンジンでは複数のカプセルやシリンダといった複数の要素を関節でつなぎ合わせてケーブルやワイヤーを表現しますが、要素数が多くなると計算量が増加し、最終的には実時間内で計算が完了しなくなります。本モデルはシミュレーション実行中に自動的に要素数を増減させ、シミュレーションの実行速度低下を抑えることができます。

注釈

AGXWireは速度を重視しており、干渉計算の精度は高くありません。ロボットが踏みつけたり、ドアに挟まれたりするようなタフなシーンには対応しておりません。このような状況ではワイヤーが発振し、シミュレーションが止まる可能性があります。

サンプル

サンプルを使った利用方法の説明をします。サンプルプロジェクトは以下にあります。 Choreonoidでサンプルプロジェクトをロードし、AGXSimulatorでシミュレーションを実行すると、ワイヤーが表示されます。

  • ウィンチ、ワイヤー、ワイヤーリンク
    • プロジェクトファイル: chorenoid/sample/AGXDynamics/agxWireSample.cnoid

    • ボデイファイル: chorenoid/sample/AGXDynamics/agxWireSample.body

  • 消火ホース
    • プロジェクトファイル : chorenoid/sample/AGXDynamics/FireHose.cnoid

    • ボディファイル: chorenoid/sample/AGXDynamics/FireHose.body

記述方法

サンプルモデルは以下のリンク構成となっています。

links:
  -
    name: Drum
    parent: Root
    translation: [ -1.0, 0.0, -3.0 ]
    jointType: fixed
    elements:
      -
        type: Shape
        geometry: { type: Cylinder, radius: 0.25, height: 0.2 }
        appearance: { material: { diffuseColor: [ 1.0, 0, 0 ] }}
      -
        type: AGXWireDevice
        radius: 0.02
        resolutionPerUnitLength: 5
        collision: true
        selfCollision: true
        materialName: Wire
        #wireYoungsModulusStretch: 6E10
        #wireSpookDampingStretch: 0.075
        #wireYoungsModulusBend: 6E10
        #wireSpookDampingBend: 0.075
        Winch:
            linkName: Drum
            position: [ 0.0, 0.0, 0.27 ]
            normal: [1.0 , 0.0, 0.0 ]
            pulledInLength: 50
            haulForceRange: [ -50, 50 ]
        Nodes:
          -
            type: free
            linkName: Root
            position: [ -0.27, 0.0, 0.27]
          -
            type: free
            linkName: Root
            position: [ 0.27, 0.0, 0.27]
          -
            type: link
            linkName: Sphere
            position: [ 0.0, 0.0, 0.1]
            #twistStiffness: 1.0E10
            #bendStiffness: 1.0E10
            #superBendReplacedWithBend: true
  -
    name: Sphere
    parent: Root
    translation: [ 1.0, 0.0, 0.0 ]
    jointType: free
    mass: 1.0
    elements:
      -
        type: Shape
        geometry: { type: Sphere, radius: 0.1 }
        appearance: { material: { diffuseColor: [ 0.0, 1.0, 0 ] }}
      -
        type: AGXWireDevice
        radius: 0.04
        resolutionPerUnitLength: 5
        collision: true
        selfCollision: true
        materialName: Wire
        Nodes:
          -
            type: link
            linkName: Sphere
            position: [ 0.0, 0.0, -0.1]
          -
            type: fixed
            linkName: Box
            position: [ 0.0, 0.0, 0.1 ]
  -
    name: Box
    parent: Sphere
    translation: [ 0.0, 0.0, -2.0 ]
    jointType: free
    mass: 5
    elements:
      -
        type: Shape
        geometry: { type: Box, size: [ 0.2, 0.2, 0.2] }
        appearance: { material: { diffuseColor: [ 0.0, 1.0, 0 ] }}
  1. AGXWireは任意のリンクのelements部分にAGXWireDeviceとして追加します

  2. ワイヤーのパラメータを設定します

  • ワイヤーの半径をraidusに設定します

  • ワイヤーの解像度をresolutionPerUnitLengthに設定します

  • ワイヤーと他のリンク、環境との干渉を有効にするかどうかをcollisionに設定します

  • ワイヤーの自己干渉を有効にするかどうかをselfCollisionに設定します

  • ワイヤーの材質をmaterialNameに設定します。 物理マテリアルの追加パラメータ を参考にしてください。

  • wireYoungsModulusStretchなどのパラメータについては直接記述することも可能ですが、マテリアルを利用することを推奨します

  1. ワイヤーをウィンチから取り出すようにする場合には以下を設定します

  • ウィンチとして利用するリンク名をlinkNameに指定します。これはAGXWireDeviceを設定しているリンクである必要はなく、任意のリンクを指定することができます。

  • linkNameに設定をしたリンクの座標系に対して、ワイヤーを出す位置をpositionに設定します。

  • linkNameに設定をしたリンクの座標系に対して、ワイヤーを出す向きをnormalに設定します。

  • ウィンチにワイヤーを保管しておく長さをpulledInLengthに設定します

  • ウィンチからワイヤーを引き出す、収納にするのに必要な力をhaulForceRangeに設定します

  1. 次にNodeハッシュを利用してワイヤーを空間に這わせます

  1. ワイヤーは3通りの方法で這わせることができ、這わせ方をtypeとして指定します

  • type: free ワイヤーを指定の位置に這わせます。固定はされません。

  • type: fixed ワイヤーを指定のpositionに固定します。固定部分は自由に回転します(ボールジョイント)。

  • type: link ワイヤーと指定のリンクに接続します。接続部分はねじり硬さ、曲げ硬さを設定することができます。

  1. 次にどの座標系でワイヤーを這わせるかをlinkNameに設定します

  • linkNameが存在するリンク名の場合: リンク座標系

  • linkNameが空または存在しないリンク名の場合: ワールド座標系

  1. 最後に這わせる位置をpositionに設定します

../_images/wire-detail.png

パラメータの説明

以下にパラメータの説明をします。

ワイヤー

パラメータ

デフォルト値

単位

意味

type: AGXWireDevice

-

-

string

AGXWireを使うことの宣言

radius

0.02

m

double

ワイヤーの半径

resolutionPerUnitLength

-

m

double

ワイヤーの最小解像度

collision

-

-

bool

他のオブジェクトとの干渉のON、OFF

selfCollision

-

-

bool

自己干渉のON、OFF

materialName

-

-

string

マテリアルの設定

wireYoungsModulusStretch

6e10

N/m

double

引張方向のヤング率

wireSpookDampingStretch

0.075

s

double

引張方向のスプークダンパ

wireYoungsModulusBend

6e10

N/m

double

曲げ方向のヤング率

wireSpookDampingBend

0.075

s

double

曲げ方向のスプークダンパ

twistStiffness

0

N/m

double

type:linkのみで有効。ワイヤとリンク接続部分のねじり硬さ。

bendStiffness

0

N/m

double

type:linkのみで有効。ワイヤとリンク接続部分の曲げ硬さ。

superBendReplacedWithBend

false

-

bool

type:linkのみで有効。ワイヤとリンク接続部分を曲げやすくします。

ウィンチ

パラメータ

デフォルト値

単位

意味

linkName

-

-

string

ワイヤーを取り出すリンク名

position

-

Vec3

ワイヤーの取り出し位置

normal

-

Vec3

ワイヤーの取り出し向き

pulledInLength

m

double

ウィンチへのワイヤー収納量

haulForceRange

N

Vec2

ウィンチからワイヤーを取り出す、収納するために必要な力

ノード

パラメータ

デフォルト値

単位

意味

type

-

-

string

ワイヤーを這わせる方法: free, fixed, linkを指定

linkName

-

-

string

type: linkの場合に有効。指定のリンクにワイヤーを取り付けます。

position

-

Vec3

ワイヤーを這わせるまたは取り付ける位置

ワイヤーの干渉設定

../_images/wire-collision.png

AGXWireの特徴 で説明いたしました通り、agxWireはロボットが踏みつけたりするようなケースに対応しておりません。 しかし、このようなケースに遭遇しないようロボットを操作することは難しいと思います。 ここでは対策として下記の方法を説明します。

ワイヤーとの指定のリンクとの干渉を無効にする

上図左のように、ワイヤーと指定のリンクとの干渉を無効にします。 これは ボディモデルの追加パラメータ の干渉設定のexcludeLinksWireCollisionを設定することで実現できます。

collisionDetection:
  excludeLinksWireCollision: [ linkQ, linkR, ... ]

ワイヤーと干渉を回避したいリンクにガードをつける

もう一つの方法としては、上図右のようにワイヤーと干渉を回避したいリンクにガードをつけることです。 これはボディファイルに下記のように記述することで実現できます。 ボディにガードとして利用するリンクを追加します。 しかし、このままでは他のリンクと干渉、自己干渉が発生しますので、excludeLinksDynamicを設定し、リンク間の干渉を無効化します。 すると、ガードはワイヤーのみと干渉するようになります。

  -
    name: WIRE_GUARD_L
    parent: TFRAME
    jointType: fixed
    translation: [ -0.02, -0.595, 0.600 ]
    material: default
    elements: &WireGuard
      -
        type: Collision
        elements:
        -
          type: Shape
          geometry: { type: Box, size: [ 2.1, 1.5, 0.5 ] }

collisionDetection:
  excludeLinksDynamic: [ WIRE_GUARD_L, WIRE_GUARD_R ]

仕様

  • ワイヤーマテリアルのパラメータはマテリアルファイル < 直接記述の順番でオーバーライドされますのでご注意ください。