TankJoystickチュートリアル(1)

概要

本チュートリアルでは、OpenRTMの枠組みを用いて、以下の図に示す戦車型ロボットをジョイスティック(ゲームパッド)で操作するサンプルを実現します。このロボットはは2つのクローラと2軸の砲塔で構成されており、クローラによって移動したり砲身の向きを変えたりすることが可能です。砲身の先にはライトとカメラが搭載されており、これらを用いてライトで照らされた環境のカメラ画像を見ながらロボットで探索するという状況のシミュレーションを行うことができます。

本サンプル実行時の画面を以下に示します。中央のシーンビューではロボットに搭載されたカメラの視点で描画を行っています。

../_images/TankJoystickScreenShot.png

本サンプルの実行には4軸以上の操作軸とひとつ以上のボタンを備えたジョイスティックが必要となりますが、ジョイスティックの実物がない場合でも、Choreonoid本体に含まれる「仮想ジョイスティックビュー」を用いてキーボードで操作することが可能です。

本サンプルはChoreonoid本体に付属のOpenRTMサンプルに含まれています。プロジェクトファイルは “OpenRTM-TankJoystick.cnoid” になります。

OpenRTMプラグイン・サンプルの導入

OpenRTMの機能をChoreonoid上で利用可能とするためには、 OpenRTM-aist がOSにインストールされた上で、Choreonoidの オプション機能 のひとつである「OpenRTMプラグイン」もインストールされている必要があります。Choreonoidをソースコードからビルドしている場合は、ビルド時のCMakeの設定で、以下のオプションをONにするようにしてください。

  • ENABLE_CORBA
  • BUILD_CORBA_PLUGIN
  • BUILD_OPENRTM_PLUGIN

OpenRTMプラグインがインストールされていると、Choreonoid起動時にメッセージビューに

OpenRTMプラグインが読み込まれました。

と表示されます。

また、本チュートリアルのサンプルはBUILD_OPENRTM_SAMPLESをONにすることでビルドされます。チュートリアルを進める際にもサンプルに含まれるファイルが必要となりますので、このオプションも有効にしておいてください。

シミュレーションプロジェクトの作成

まずはシミュレーション対象となる仮想世界を構築し、シミュレーションの基本的な設定を行います。この手順の詳細については シミュレーションプロジェクトの作成 を参照してください。

まずはワールドアイテムを作成してください。次に今回使用するTankモデルをワールドアイテムの小アイテムとして読み込みます。TankモデルはChoreonoidのshareディレクトリの model/misc 以下に “tank.body” というモデルファイルとしてインストールされていますので、これをボディアイテムとして読み込みます。読み込んだアイテムに対してアイテムツリービュー上でチェックを入れて、シーンビューに表示してください。

環境モデルとしてはシンプルな床のモデルを使ってもよいのですが、今回はロボットが実際に稼働する場所の雰囲気を出すために、”Labo1”という研究プラント風のモデルを用いることにします。このモデルはshareディレクトリ以下の “model/Labo1/Labo1.wrl” というファイルになりますので、これもロボットモデルと同様にワールドアイテムの小アイテムとして読み込み、チェックをいれてください。

上記のモデルを読み込んだら、モデルに対して 初期状態の設定 を行っておきます。TankモデルがLabo1の床上に一致するように配置してください。

次に シミュレータアイテムの作成と設定 を行います。今回は 無限軌道の簡易シミュレーション に対応したシミュレータアイテムであれば何でもよいのですが、標準のAISTシミュレータアイテムもこの機能に対応していますので、これを使えばOKです。これもワールドアイテムの小アイテムとして作成します。設定はデフォルトのままでもかまいません。

以上の作業を行うと、アイテムツリービューは以下のようになっているかと思います。

[ ] - World
[/]   + Tank
[/]   + Labo1
[ ]   + AISTSimulator

時間分解能の設定 も行います。値としてはとりあえず 1000 [fps] を用いることにしましょう。

これでシミュレーションプロジェクトの土台が完成しましたので、適当なファイル名で プロジェクトの保存 を行っておきましょう。これ以降の作業についても、プロジェクトの設定が進むたびにプロジェクトファイルを保存しておくとよいでしょう。

RTシステムアイテムの導入

OpenRTMでは、RTコンポーネント(RTC)によってロボットのシステムを構築します。システムは通常複数のRTCによって、それらの有する入出力ポート、サービスポートを接続することで構成されます。ChoreonoidのOpenRTMプラグインでは、そのような接続情報を管理するためのプロジェクトアイテムとして、「RTシステムアイテム」を提供しており、これを用いることでChoreonoidのプロジェクトとしてRTCのシステムを構築することができます。

本サンプルでも複数のRTCを利用しますので、この「RTシステムアイテム」が必要です。メインメニューの「ファイル」-「新規」より「RTシステム」を選択して、このアイテムの生成を行ってください。本アイテムのアイテムツリー内での配置場所はどこでもよいのですが、今回はWorldアイテムの小アイテムとして配置することにします。その場合、アイテムツリーは以下のようになります。

[ ] - World
[/]   + Tank
[/]   + Labo1
[ ]   + AISTSimulator
[ ]   + RTSystem

このような配置にすることで、構築するRTシステムがこの仮想世界を対象としたものあることが分かりやすくなるかと思います。

RTコンポーネント管理用ビューの導入

RTCを用いたシステムをChoreonoid上で構築するにあたっては、そのためのユーザーインタフェースも必要になります。ChoreonoidのOpenRTMプラグインではこれに対応する以下の3つのビューを提供しています。

  • RTCリストビュー
現在システムに存在するRTCの一覧を表示するビューです。これによって必要なビューが生成できているかを確認したり、操作対象とするRTCを選択したりすることができます。
  • RTCダイアグラムビュー
各RTCが有する入出力ポートとそれらの間の接続設定を確認・編集するためのビューです。RTCとそのポートが模式的な図形で表示され、ポート間の接続状況がポート間を結ぶ線として表示されます。このビューは基本的にRTシステムアイテムを編集対象とするものであり、利用にあたってはまずRTシステムアイテムを生成しておく必要があります。アイテムを一度選択しておけば、それが本ビューの編集対象となります。
  • RTCプロパティビュー
RTCのプロパティを確認するためのビューです。RTCリストビューで選択したRTCがこのビューの対象となります。

Choreonoid上でOpenRTMを用いてシステムを構築する際にはこれらのビューが必要となりますので、まずこれらのビューを表示しておくようにしましょう。 ビューの表示切り替え にあるように、メインメニューから「表示」-「ビューの表示」とたどっていきます。すると、OpenRTMプラグインが読み込まれていれば、ここに「RTCリスト」、「RTCダイアグラム」、「RTCプロパティ」の項目があるはずです。それらのチェックを入れることで、ビューを表示することができます。この際ビューはデフォルトで定められた場所に表示されますが、作業がしやすくなるよう必要に応じて レイアウトの変更 を行ってください。と言ってもこれらのビューを使う作業はこれからなので、実際に作業を行ってみてから使いやすいレイアウトを考えてもよいかと思います。

ビューを表示したらその状態もプロジェクトファイルに保存しておきましょう。これを行うためには、 レイアウトの保存 にあるように、メインメニューの「ファイル」-「プロジェクトファイルオプション」-「レイアウト」のチェックを入れておきます。そのようになっていれば、ビューの表示状態とレイアウトもプロジェクトファイルに保存され、プロジェクト読み込み時にそれが再現されることになります。

ロボット入出力用RTCの導入

ロボットシステムをRTコンポーネントを用いて構築する場合、まず必要となるのがロボットに対応するRTCです。これは正確には、ロボットに搭載されているアクチュエータ、エンコーダ、力センサ、加速度センサ、角速度センサ、カメラ、レーザーレンジセンサといった各種デバイスの入出力を担うRTCを指しています。そのようなRTCはそれぞれのデバイスに対して個別に用意されることもあり得ますが、ここではあるロボットに関わる入出力の全てをまとめたRTCがあるものと想定し、これを「ロボット入出力用RTC」と呼ぶことにします。

ChoreonoidのOpenRTMプラグインでは、この「ロボット入出力用RTC」を導入するためのプロジェクトアイテムとして、「BodyIORTCアイテム」を用意しています。このアイテムにより、入出力RTCの動作をシミュレーションの進行と同期するための処理がシミュレーション時に行われます。

実際にTankモデルに対してBodyIoRTCアイテムを用いて入出力用RTCを設定してみましょう。まずBodyIoRTCアイテムを生成し、Tankアイテムの小アイテムとしてこれを配置します。アイテムツリーは以下のようになります。

[ ] - World
[/]   + Tank
[ ]     + BodyIoItem
[/]   + Labo1
[ ]   + AISTSimulator
[ ]   + RTSystem

次に、実際に利用する入出力用RTCを指定します。これはBodyIoRTCアイテムの「RTCモジュール」プロパティを用いて行います。ここでは本サンプルが提供する “TankIoRTC” というRTCモジュールを用いることにします。プロパティビューを用いて、「RTCモジュール」プロパティに “TankIoRTC” と入力してください。このように設定すると、モジュール名に共有ライブラリの拡張子 ”.so” を付与した”TankIoRTC.so”というモジュールファイルが「相対パスベース」プロパティで設定されたディレクトリから読み込まれます。「相対パスベース」はデフォルトで「RTCディレクトリ」となっており、これはChoreonoidのプラグインディレクトリ内の”rtc”というサブディレクトリに対応しています。OpenRTMサンプルが正しくビルド・インストールされていれば、このディレクトリに”TankIoRTC.so”というファイルが存在するはずです。

上記の設定を行うと、”Tank”という名前でTankIoRTCのインスタンスが生成されているはずです。これをRTCリストビューで確認してみましょう。RTCリストビュー上で「更新」ボタンを押した際に、以下のように “Tank” の表示がでてくればOKです。

../_images/rtclist-tank.png

この表示が出ない場合はRTCの生成がうまくいっていませんので、設定内容やRTCモジュールファイルの存在等を確認してみてください。

生成されたRTCの入出力ポートも確認してみましょう。まず、先ほど生成したRTシステムアイテムをアイテムツリービュー上で選択します。そして、RTCリストビューの”Tank”の部分をマウスでドラッグして、RTCダイアグラムビューの上にドロップしてみてください。するとRTCダイアグラムビュー上で以下のように表示されるかと思います。

../_images/rtcdiagram-tank.png

注釈

コントローラアイテム

注釈

BodyRTCアイテム